札医大の研究室から(21) 大日向教授に聞く(十勝毎日新聞?札幌医科大学 包括連携協定事業)

十勝毎日新聞ロゴ

 札医大の保健医療学部は、看護学科?理学療法学科?作業療法学科からなる国内初の医療系学部。1993年の開設以来、看護師や保健師、理学療法士や作業療法士など多くの人材を輩出してきた。「患者に寄り添う看護教育」について、保健医療学部長の大日向輝美教授に聞いた。(聞き手?浅利圭一郎)


大日向輝美(おおひなた?てるみ)

 1962年札幌生まれ。83年道立衛生学院看護婦第一科卒業、札幌医科大学附属病院看護婦。92年北海学園大学法学部卒業。93年札幌医科大学保健医療学部看護学科助手。95年北海学園大学大学院法学研究科修了、2001年札幌医科大学保健医療学部看護学科助教授、07年北海道大学大学院教育学研究科単位修得退学。11年札幌医科大学保健医療学部副学部長?看護学科長などを経て、15年から現職。

札医大の研究室から(21) 大日向輝美教授に聞く 2018/06/08

浅利:「患者に寄り添う心」とは。
大日向:看護師は、健康に関わる日々の生活を支える役割を担い、患者のもっとも近くにいる医療職。患者が病気やケガをどのように受け止め、症状が生活にどんな不都合をもたらしているのかに関心を寄せる職種だ。
 人が「生きることを支える」のと「生き抜く(死んでいく)」ことを支える2つの役目がある。一人の人間として患者に関心を持ち、不安や苦痛に働き掛けて安心感を与える、患者本位の視点で物事を考える、といったことが当てはまる。

浅利:それらを備えることで得られる変化は。
大日向:患者の心に寄り添ったケアを行うことで、免疫産生を抑制し、回復に悪影響を及ぼす緊張や不安、苦痛が緩和され、治療効果を高めることが最近の研究でも明らかになっている。“愛情ホルモン”などと呼ばれるオキシトシンの分泌が促されたり、副交感神経が優位になったりすることでリラックスをもたらし、回復にとって好ましい状態になっていく。

浅利:そういったマインドを育むため、どのような教育を実践するか。
大日向:2011年の東日本大震災のあたりから、「寄り添う」という感覚が重視されるようになった。ただ、看護の世界ではナイチンゲールの時代から重視されてきた概念でもある。
 保健医療学部でも、看護学科のほか、作業療法、理学療法の2学科があるが、それら資格職でも生活の支援という観点から「患者に寄り添う」ということを大切にしている。特に看護は字の通り、患者の「手と目」になる営み。もともと人に備わっているマインドを強化する教育を行っている。

浅利:カリキュラムではどのようなことが行われているのか。
大日向:看護学科でいえば、1学年50人と看護系の大学としては極めて少人数。この強みを生かして、付属病院での臨床実習でも、マンツーマンで患者に付き、人それぞれの個別性を具体的に把握する学習に力を入れている。
 そのほか、模擬患者の協力を得て、体験学習を多く設定している。ここでは実際の病院実習では体験できないようなことを模擬患者を通して患者の立場に立った看護を徹底して学んでいる。本学の卒業生は現場からも高い評価を得ている。

浅利:十勝や地方の住民に向けて。
大日向:十勝やその他の地方でも本学の卒業生は看護師や保健師、助産師として多く活躍している。看護師というと、病院で働く姿をイメージすると思うが、在宅医療や介護予防など地域の身近なところで働いている。
 看護師は、診療に関連する業務から療養生活そのものに至るまで幅広い業務を担い、医療従事者の中で人口が一番多い職種でもある。だが、仕事に対する一般の理解が十分とはいえない状況もある。看護師や保健師を上手く活用してもらえるよう啓発に努め、十勝にも出向きたいと思う。

発行日:

情報発信元
  • 経営企画課 企画広報係